フリーコンサルタントにおけるDX(デジタルトランスフォーメーション)案件
Post Date: 2020-08-26
近年、コンサル案件で増えている「デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation ; DX)」ですが、今回はこの意味や目的について説明したうえで、フリーコンサルタントにおけるDX案件とはどういったものなのかについて紹介していきたいと思います。
DX案件とは
DXの定義
先ずは、デジタルトランスフォーメーションを広義と狭義に分けて定義していきたいと思います。「デジタルトランスフォーメーション」という単語は、ウメオ大学(スウェーデン)のエリック・ストルターマン教授が2004年に発表した論文の中で初めて提唱したと言われています。その意味合いとしては、「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向へと変化させる」というものです。
また、経済産業省は、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活かして、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義しています。
すなわち、デジタルトランスフォーメーションとは、広義ではIT技術による“社会の変革”を意味し、狭義ではIT技術による“企業の変革”を意味します。
*DXの定義などについてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事も併せてお読み下さい
「デジタルトランスフォーメーション特集①コンサルティング業界から見たデジタルトランスフォーメーションとは」
DXにおいて目指すゴール
次に、デジタルトランスフォーメーションが目指すべきゴールについて説明していきたいと思います。
―ビジネスモデルの変革
DXの真の目的ともいえる部分です。IT技術の飛躍的進歩やAIの登場などに代表されるように、今日の社会はこれまでとは比べ物にならない速度で変化し、デジタル化が進んでいます。そのなかで常に最適なビジネスモデルを取り続けるために、以下のような施策が必要となります。デジタルの知見を用いるというよりは経営戦略/事業戦略に関わる部分ですが、デジタルと経営が切り離せない関係になっていることを考えると、DX戦略のはじめの一歩が、経営戦略/事業戦略と密接に関わってくるのも自然な流れといえるでしょう。
―自社提供価値の明確化
消費者の需要や嗜好性が多様化している中で、自社の提供価値を明確化するのは非常に大きな意味を持ちます。
―徹底した顧客中心主義
今日では、顧客の立場が強くなり、カスタマーエクスペリエンスを意識することが必要となっています。顧客がどのような価値を、あるいは体験を求めているかということが今後のビジネスにおいて非常に重要になります。
そして、この顧客の行動は従来にない速度で変化していきます。
―素早いPDCAサイクル
上記の2点を意識するのは非常に重要ですが、もう1点気を付けなければいけない点があります。それは、提供価値や顧客設定を硬直化させないことです。その理由は主に2点あります。
1点目は、顧客変化の速さにあります。従来のように緻密にペルソナ設定をしていては、その間に顧客が変化し、ニーズが無くなってしまう可能性があります。
2点目に、競合の速さもあります。デジタル化が進んだ社会においては、参入障壁は非常に低くなり、柔軟にビジネスモデルを変化させていくことができます。そのため、価値を硬直化させてしまうと、すぐに競合に負けてしまいます。
こうした事態を避けるため、提供価値や顧客設定に関して高速でPDCAを回し、柔軟に戦略を変えていく必要があります。
―オペレーションの改善
DX戦略のもう1つの核となる部分であり、足元実施している企業が非常に多い部分です。ビジネスモデルの変革の前段階とも言えるでしょう。具体的にはRPAやAI導入が挙げられます。(RPAやAIの導入の具体的方法などは、DX戦略の本筋からそれてしまうため、ここでは割愛させて頂きます。)
―レガシーシステム/組織からの脱却
国内企業の多くはレガシーシステムによる技術的負債の問題を抱えています。それに対応するために、新システムの移行を行う企業も多くあります。
一方で、レガシーシステムから脱却するためには、単に新システムを導入するだけでは足りません。デジタルを経営における最重要課題として認識し、レガシーな「組織」そのものから脱却していく必要があります。
*関連記事「デジタルトランスフォーメーション特集③デジタルトランスフォーメーションの本質と戦略策定方針」
DX案件の具体的な内容
さて、ここまでデジタルトランスフォーメーションの定義や目的について述べてきました。ここからは、上記のような目的を達成するためにコンサルタントが取り扱うDX案件の具体的な内容を見ていきたいと思います
企業全体をデジタル化し、新たなビジネスモデルを確立することがデジタルトランスフォーメーションの目的である為、必然的に中長期経営戦略に立脚したデジタル戦略立案を支援することになります。業務の内容としては、クライアントによって異なり、一般的な戦略コンサルティングと同様の場合もあれば、ITコンサルタントのような特徴を持っている場合もあります。
〈主な業務内容〉
・基幹となるITシステムの構築と実行
既存のシステムの中で使える部分とそうでない部分を適切に判断し、最も効果的にシステムが機能する仕組みを作ります。
・デジタル戦略立案
単に最新技術ツールを導入しただけでは何の変化も期待できません。最新のデジタルソリューションに関する深い知見と洞察を持ち、企業の中長期経営計画をサポートします。
・デジタル組織戦略立案
デジタルトランスフォーメーションを実現するためには、組織全体として推進する統一されたDX戦略を持つ必要があります。コンサルタントはDXを全社的な取り組みへと位置付けることをサポートします。
DX案件のニーズは高まっている
日本のデジタルトランスフォーメーションの現状と要因
かつて日本のハイテク産業はその高い品質を差別化要因として非常に高い競争力を保っていました。ところが、2000年以降はほぼゼロ成長が続き、逆に、グローバルなハイテク企業は圧倒的に高収益体制を実現しています。
このような日本企業のDXの遅れは、「いいものを作れば自然に売れる」という品質に対する神話を捨てきれず、デジタル化によって起こったビジネス環境の変化に対応できなかった事が主な原因だと考えられています。
デジタル化によって、生産者、消費者の両方に大きな変化が生まれました。水平分業化による製品の標準化によって、他国が品質面で追随してきたため、差別化を図る事が難しくなり、消費者行動の変化によって、機能を豊富にしても商品が売れなくなっていきました。こうした問題があるにもかかわらず、日本はどこか慢心的に構えてしまっていたため、DXにおいて他国と大きく差が開いてしまいました。
2025年の崖
経済産業省の「DXレポート」では、2025年には21年以上使用されている基幹システムが6割に達し、その保守・運用の費用がIT投資の9割以上になってしまうと推定しています。また、IT人材不足も2015年の17万人から43万人まで拡大すると考えられています。
さらに、既存システムを保守・運用してきた世代が退職してしまい、システムそのものがブラックボックス化しているケースもあり、システムの変更がそもそも難しくなっている場合があります。しかし、既存システムを放置すれば年々その保守・運用コストは高騰していき、人材も割くことになるため、長期的にみると払う必要のないコストを払うことになってしまいます。
(出典:経済産業省 DXレポート)
経済産業省はこれらの問題を「2025年の崖」と称し、2025年までに集中的にシステム刷新を推奨していく必要があるとしています。
DXの必要性
あらゆる産業において、新しいデジタル技術を用いたこれまでにないビジネスモデルが登場してきています。過去のアナログ時代のビジネスプロセスや組織にこだわっていては、日々急速なスピードで変化している現代社会を生き残ることは困難です。上述したように、確かに日本は現在DXにおいて、アメリカはおろか世界と比較しても大幅に遅れています。しかし、別の見方をすればこれは、日本のDXは極めて伸びしろが大きいと捉えることができます。
実際、経済産業省がDXを促進し始めたり、品質に対する神話を捨て、IT分野に力を入れ始める企業が増えたりしたことで、DX案件のニーズが高まってきています。今後も間違いなく大幅な成長が見込める分野であると言っていいでしょう。
フリーコンサルにおけるDX案件との関わりと必要なスキル
フリーコンサルタントのDX案件との関わり方は、クライアントのニーズによって異なり、大きく分けて二種類あります
1. 戦略コンサルタントとして企業の経営戦略を企画する
上述のようにDXは単なる業務効率化の範疇におさまるものではなく、企業経営の中核をなすものです。組織がデジタル化を効率よく進めていくための活動を長期的に支援していきます。
〈必要なスキル〉
・コンサルティングファームでの実務経験
・DXに関する深い知見
・デジタル関連プロジェクトへのアサイン経験
など
2. ITコンサルタントとして企業のデジタル化を手助けする
既存のITシステムを脱却し、企業のDXの根幹をなすITシステムの構築を支援します。より専門色の強い、技術者寄りの立場から企業の企画経営に携わります。
〈必要なスキル〉
・インフラストラクチャー及びネットワーキング運用経験
・自動化ツールの経験(ex. puppet , chef)
・フロントエンドの知識
など
フリーランス向けのDX案件の具体事例
クライアント:大手ゲーム会社
稼働 :60-80%
業務内容 :レガシー基幹システムの刷新に向けたRFI作成準備
人材要件 :基幹システムに関する構想策定の知見
クライアント:商社
稼働 :100%
業務内容 :顧客側PMOとして業務・システムの課題管理/各チーム横断課題の解決支援
人材要件 :PMO経験/基幹システム構築経験
クライアント:大手商社
稼働 :100%
業務内容 :5Gに関わる商社DXサービスの企画・実行支援/事業計画書作成
人材要件 :戦略コンサルファーム出身者/デジタル部門MGRレベルのスキル経験
クライアント:IT企業
稼働 :80%以上
業務内容 :各システムから情報を収集、AIを用いて集約可能な業務を可視化
人材要件 :データ分析経験/IT業界におけるコンサルティング経験
クライアント:金融企業
稼働 :80%以上
業務内容 :CRMシステムの導入を踏まえたシステム全体のアーキテクチャ設計
人材要件 :システムアーキテクチャ及びデータフローの作成経験/CRMパッケージ導入経験
クライアント:日系大企業
稼働 :80-100%
業務内容 :事業改善における提案活動全体のリード/プロジェクトの進行管理
人材要件 :コンサルファーム出身者
クライアント:通信・メディア
稼働 :80-100%
業務内容 :DX営業仮説立案/新領域調査及びビジネス創出機械の検証
人材要件 :コンサルティングファームでの4年以上の実務経験/B2B営業経験
クライアント:流通業界
稼働 :80-100%
業務内容 :IT調査の業務実施/データ集計作業・報告書のドラフト作成
人材要件 :顧客向け説明資料の作成スキル/ITガバナンス関連の業務経験
クライアント:航空業者
稼働 :50-100%
業務内容 :ベンダーガバナンスの作成/アジャイル体制構築
人材要件 :コンサルティングファーム出身/DXPJの経験
クライアント:自動車メーカー
稼働 :100%
業務内容 :カスタマージャーニーに合わせた企業戦略の立案/ITシステム導入支援
人材要件 :戦略案件を5年以上経験/大手企業向け戦略案件のPM経験
まとめ
いかかでしたでしょうか。これからますますITが社会に浸透していき、新しいデジタル技術も開発され続けていくでしょう。日本でも、世界に追いつき、追い越すためにDXはこれから盛んに行われていくと思います。フリーコンサルタントとしてDXに関わり、企業の組織デザインや経営手法を抜本的に再定義するプロセスに携わることはとても魅力的なことではないでしょうか。フリーコンサルタントだからこそ、業界やソリューションに縛られずチャレンジできることもあるかと考えます。
弊社でもフリーランスコンサルタント向けのDX案件を取り扱っております。以下のフリーコンサル向けページよりアクセスください。